富山県氷見在住の魚料理研究家「昆布」による連載コラムvol.21
日中は寒さが和らぎ、朝の結露に悩まされる日も少なくなってきました。
1・2月は残雪が酷くほぼ通行止めの状態だった歩道は一変し、雪解けを迎えた3月はスニーカーで悠々とスキップだってできちゃうのです(!)。
おかげで氷見のまちなかを散歩する人が増え、その途中に当店にも立ち寄っていただける人がちらほらと。
そんな一つ一つの小さな変化に春の訪れを感じて、無性に嬉しくなる今日この頃です。
春の気配とともに
そんな春の気配に引っ張られるように、冬の間は自粛気味だったイベントが少しずつ増えてきました。
先日は氷見の漁業文化交流センターにて移住者向けのイベントがあり、そこで氷見ブリの解体ショーを行いました。丸々一匹をおろして2種類のカルパッチョに仕上げるまでをイベントの参加者に見てもらいましたが、一番歓声が上がったのは大トロ部分である腹身の部分が見えた時。
脂が白く光って見るからにおいしそうな色がお目見えした瞬間でした。
おろした後は腹身を軽く炙って脂を浮き上がらせた後香味ダレをかけた一品に。
背身は生のまま氷見醤油のソースをかけた一品に仕上げました。
多くの参加者がブリの新鮮さと脂乗りに感動する姿を見て、改めて氷見ブリの凄さを実感。また来年もこんなイベントができたらいいなぁ。
県内外どこでも馳せ参じますので、このコラムをご覧の皆様からのご依頼お待ちしております!
イワシ大漁期
さて初春の富山湾はというと、まさにイワシ一色。
ある海洋学者の方が言うには、20年周期でやってくるイワシ大漁期のピークが今だそうで。
連日定置網はイワシでパンパンに膨れ上がり、あまりの重さに網が壊れてしまうこともしばしば。
市場では大量のイワシを入れた大型のタンクが所狭しと積み上がり、他の魚は見る影もありません。あまりの大漁にTVからラジオ、ネット番組まで1週間に3回もイワシ大漁について取材を受けました。
「イワシばかり獲れすぎて他の魚が無いと大変じゃないですか?」としきりに聞かれるのですが、
僕は「毎日ただひたすら旬の氷見イワシの脂乗りを活かすことを考えるしかないですね」と答えることにしています。
今が旬のイワシの大型のものを捌くと手や包丁が光ってくるほどの脂乗り。
こんな状態のイワシならどんな調理法でも必ず美味しく仕上がります。
当店では酢締めにしたマリネやカルパッチョ、照り焼きにしてサンドイッチにするなどさまざまな料理で提供中。
先日はコース料理をご注文いただいた方に、しゃぶしゃぶをお出ししました。
軽く昆布で締めたイワシを同じく旬のワカメと共に出汁にくぐらせ、さっぱりとポン酢で食べて頂く一品です。
これが今のところ当店のイワシの最高の食べ方だと思っていますが、
まだまだイワシの探求は続けていかなければ。
なぜなら来年もイワシ大漁のピークは続くようなので(!)。開き直って共に20年ぶりのイワシ祭を楽しんでいこうやないけ…!
今回は解体ショーでも作ったカルパッチョのレシピをご紹介。
・刺身用の魚サク 150g
・水菜 1束
・長ネギ 1/2本
・ニンニク 1片
・米酢 大さじ1
・太白ごま油 大さじ2
・醤油 大さじ½
・塩 適量
・黒胡椒 適量
・白ごま 適量
❶サクは表面に軽く塩をふり、10分ほど置いて水分が出てきたらしっかりとふき取る。
❷みじん切りにしたネギ、すりおろしたニンニク、米酢、太白ごま油、醤油を混ぜ、味見をしながら塩を足して味を調えたらネギ塩だれの完成。
❸フライパンに分量外の太白ごま油を薄く引き、サクを転がしつつ中火で全面に焼き色が付くまで焼いたら取り出す。
❹ざく切りにした水菜を皿に敷き、粗熱がとれたサクを薄く切ってその上にのせる。最後に❷のネギ塩だれをかけ、黒胡椒と白ごまを振りかけたら出来上がり。
イワシやブリなどの青魚から白身魚やマグロにも合う一品。ぜひお好みの魚でお試しあれ。
魚料理研究家【昆布】
魚料理研究家。本名: 近森光雄、1993年東京都下町生まれ。
大学卒業後、魚屋に3年半勤務。旅行で訪れた富山県氷見のあまりにも新鮮な魚に一目ぼれし、2019年10月氷見へ移住。
地元の魚屋・漁師・料理人と語らいながら、日々魚料理の新たな可能性を素材と調理法の両面から研究中。
サウナを愛するあまり、スーパー銭湯の近くに住んでいる。