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富山県氷見在住の魚料理研究家「昆布」による連載コラムvol.17

この頃朝仕事へ向かうため駐車場に向かうと、窓が結露している車を多く見かけるようになりました。
「あぁ冬が来る…」と体の芯から身震い。雪の日々を憂う心持ちが、寒風以上に自分の体を冷やしていくようで。

先日は道路の中央に設置されている消雪パイプが試運転をしていたようで、町中至る所で久しぶりに散水していました。
雪国では当たり前なこんな光景も、3年前―2019年10月-に移住した時には、「冬にスプリンクラー?」なんて物珍しく眺めたものだっけ。
あれから4回目の冬を迎えるわけですが、冬ごとに気温も降雪量も違うため慣れるやら慣れないやら。

これに加えて冬の訪れがトラウマになりつつあるなと最近思ったのは、馴染みの魚屋さんに行った時。
店内でお惣菜用に作られていたフグの味噌煮の匂いが鼻をついた瞬間、ここでも「あぁ冬が来る…」と思ってしまったのです。

ネギや白菜と共に煮込まれる魚の匂いが冬によく食べる鍋を思い起こさせて、(本当に)勝手に憂鬱になってしまったのです。
結露や消雪パイプのような視覚からも、フグの味噌煮のような嗅覚からも、冬の訪れを過敏に感じてしまう今日この頃。

富山またはその他雪国にお住いの皆さん、この感覚わかりませんか?

富山湾の魚はこれからが更に美味しい季節・・・

そんな人間の憂鬱はさておいて、富山湾の魚はこれからが更に美味しい季節。多くの魚が春の産卵に向けて脂を蓄えている最中です。

例年であれば今月末には氷見寒ぶり宣言も出され、大きな鰤が並び始める氷見市場はより活気づく季節になります。そんな中で10~11月に産卵を迎える魚が、「鮭」。

鮭は回遊魚として北太平洋を大きく回遊した後、自分の産まれた河川で産卵をします。富山では県西部に流れる庄川が産卵場所として有名です。長い旅を終えた富山産まれの鮭たちは、富山湾から庄川を遡上して産卵をしたのち一生を終えるのです。その遡上をする前に、氷見の定置網にかかる鮭が数多くいます。

身はもちろん美味ですが、オスの白子・メスのいくらはこの季節にしかとれない旬食材です。長い旅を終えたのに人間の都合で産卵をさせてあげられないのは大変心苦しいですが、「いただきます」と感謝をしながらそんな旬食材を活かす料理をせっせと考え、作っていく毎日です。

今日はそんな鮭にもピッタリなスープをご紹介。

【サカナの豆乳スープ】

材料
・魚の切り身 200g程度
・魚のアラ 100g程度
・昆布 5g程度
・白菜 1/4個
・しいたけ 4個
・水 500ml
・豆乳 400ml
・酒 大さじ1
・味噌 大さじ1
・醤油 大さじ1
・塩 適量
・黒胡椒 適量

作り方
❶鍋に水を張って昆布を入れ、30分ほど浸水させる。切り身は一口大に切って塩を振っておく(10分ほどおいて水気が出てきたらキッチンペーパー等でふき取る)。アラにも塩を振り、水気が出てきたら熱湯で洗い流して、キッチンペーパーで水気をふき取る。

❷昆布の浸水が終わったら、鍋にアラと酒を加えて強火にかける。ふつふつと泡が立ってきたら弱火にし、コトコトと10分ほどアクをとりながら煮る。最後に骨と昆布を、ザルやキッチンペーパーで濾したらだし汁の出来上がり。

❸新しい鍋に❷のだし汁・豆乳を入れ、中火にかける。ふつふつとしてきたら弱火にして、醤油とざく切りにした白菜、一口大にしたしいたけをいれて煮ていく。

❹白菜がクタっとしてきたら、切り身を入れる。切り身に火が通ったら、最後に味噌を溶かして入れ火からおろす。

❺お椀に盛りつけ、最後に黒胡椒を振ったら出来上がり。

冬にピッタリなあったかスープ。鮭を入れると豆乳のまろやかさとよく合いますよ。
お試しあれ。

魚料理研究家【昆布】

魚料理研究家。本名: 近森光雄、1993年東京都下町生まれ。

大学卒業後、魚屋に3年半勤務。旅行で訪れた富山県氷見のあまりにも新鮮な魚に一目ぼれし、2019年10月氷見へ移住。
地元の魚屋・漁師・料理人と語らいながら、日々魚料理の新たな可能性を素材と調理法の両面から研究中。

サウナを愛するあまり、スーパー銭湯の近くに住んでいる。