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富山県氷見在住の魚料理研究家「昆布」による連載コラムvol.7

雨のち、曇りのち、雹のち、晴れのち雷。
目を上げるたびに天気が変わる、富山の冬。そんな天候に備えるようにと、富山を含めた北陸には「弁当忘れても傘忘れるな」という格言があるそうで。太平洋側生まれの自分からすると冬はカラッと晴れているのが当たり前。なので移住当初は傘を忘れてビショビショになるなど、富山の冬の天候にはかなり困らせられました。

それから少しづつ学習して、今は店や家、はたまた車の中などいたるところに傘を配置することでなんとか突然の雨にも対応しています。最近は雨の後の虹(変わりやすい天気だからこそ頻繁に見られる)を楽しめる余裕が生まれてきたなんてことも。氷見では稀に、富山湾の水平線の端から端に架かる大きな虹を見ることができます。首をぐるりと回すことで、ようやく全てを眺めることのできるほどの大きさ。

晴れた日には海越しの立山連峰、雨の日は雄大な虹。富山湾が生み出すこんな様々な景色に日々心躍りながら、この町での生活を送っています。

「天然のいけす」と呼ばれる富山湾・・・

さて、市場では冬の魚がより一層増えてきました。鰤もようやく大きなサイズのモノがまとまって獲れ始め、先日はズワイガニ漁も解禁。「天然のいけす」と呼ばれる富山湾だからこそ漁獲される、上質な海の幸が盛りだくさんです。

そんな魚達を使った料理といえば、脂の乗った氷見寒ぶりのお刺身やしゃぶしゃぶ、香箱がに(卵を持ったメスのズワイガニ)の蒸し物など。考えただけでよだれが出そうな豪華な料理。ですが地元民はあまりそんな料理は食べません。僕自身も冬の間に一度食べられたらいいなぁ、というぐらい。

その代わりにいただくのは、鰤でいえば頭や内臓などのアラ部分。頭や中骨は大根と一緒に炊けば、旨味たっぷりのぶり大根に。そして、鰤の内臓の中でも胃は「フト」と呼ばれる富山定番の冬食材。茹でるとコリコリ食感で、ポン酢と和えると立派なお酒のアテになります。

カニでいえば、身の水分量が多い代わりに比較的安価な紅ズワイガニを地元の魚屋さんではよく見かけます。足が一本二本折れたものはさらに安く手に入れられるため、お味噌汁の中に豪快に入れて出汁代わりに使うなんてご家庭も。

そんな鰤のアラや紅ズワイガニはあまり日持ちがしないので、漁港が近い富山だからこそ身近に流通している食材達。

そんな恵みに感謝しながら、たまには鰤の刺身も食べたいなぁと今日も魚屋を覗くのです笑。

さて、今日はどんな冬の魚にも合う万能レシピをご紹介。

【サカナのトマト煮込み】

材料
・魚の切り身 200g程度
・なす 大1個
・玉ねぎ 1/2個
・ニンニク 1片
・ホールトマト缶 1缶
・ローリエ 1枚 (またはその他お好みのハーブ) 
・固形コンソメ 1個 
・醤油 適量 
・塩 適量 
・胡椒 適量 
・小麦粉 適量 
・オリーブオイル 適量 

作り方
❶切身は一口大に切り分け、塩を振っておいておきます。なすは1㎝厚さの輪切り、ニンニクと玉ねぎはみじん切りにしておきます。

❷塩をした魚の水分をふき取ったら胡椒をして、小麦粉を薄くまぶします。オイルをしいたフライパンでナスと魚を一緒に焼き、どちらも両面軽く焼き目がついたら取り出します。

❸フライパンをきれいに拭き取り、オイルとニンニクを入れて弱火で熱します。ニンニクの香りが出てきたら、玉ねぎを透き通るまで炒めます。

❹トマト缶・ローリエ・コンソメ・醤油を入れて5分ほど煮たら魚となすを戻し入れ、弱火で1~2分ほど煮て、塩胡椒で味を調えたら出来上がり。

ご飯やパンに合わせても、赤ワインのアテにも。魚の種類や脂乗りで味わいがかなり変わりますので、ぜひいろいろなお魚で試してみてくださいね。

魚料理研究家【昆布】

魚料理研究家。本名: 近森光雄、1993年東京都下町生まれ。

大学卒業後、魚屋に3年半勤務。旅行で訪れた富山県氷見のあまりにも新鮮な魚に一目ぼれし、2019年10月氷見へ移住。
地元の魚屋・漁師・料理人と語らいながら、日々魚料理の新たな可能性を素材と調理法の両面から研究中。

サウナを愛するあまり、スーパー銭湯の近くに住んでいる。